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留学ボイス
兼松 勇樹 弁護士(2017年登録)

私は2018年1月にMori Hamadaに入所し、紛争解決やコーポレート等の業務を中心に6年半執務した後、2024年7月からフィラデルフィアにあるペンシルベニア大学ロースクールに留学しています。事務所からのサポートもあり充実した日々を過ごすことができており、卒業まであと残すところ2か月となりましたので(2025年3月末にこの原稿を書いています)、これまでの留学生活を振り返りながら、その一部をご紹介します。

留学を希望した理由

私は入所当時から、特定の分野のプロフェッショナルになることよりも、依頼者のいかなる法律相談にも広く対応できるようなジェネラリストを目指して弁護士としての業務を続けてきました。そのため、紛争解決においては、会社法関係訴訟を中心としつつ、一般民事訴訟、労働訴訟、知財訴訟、証券訴訟、IT関連訴訟、不動産関連訴訟、企業不正関連訴訟等、幅広く経験を積み、コーポレート分野においても、コーポレートガバナンスをはじめとして、株主総会、株主アクティビズム対応、役員報酬関連の相談等、多くの相談を受けてきました。入所してしばらくの間は、これらの業務の大半が国内の事案でしたが、年次が上がるにつれ、海外の依頼者の訴訟対応や、英語の会議での法律相談、英語のドキュメントのレビュー等の業務が徐々に増え、英語を学ぶことで、更に自身の業務の幅を広げることができると身に沁みて感じるようになりました。
また、会社法に限らないことではありますが、アメリカの実務は日本の数年先をいっていることが多く、アメリカの実務を参考に日本の法改正がされることもしばしばあります。実際に私が担当した会社法関係訴訟において支配株主の義務が争点となっていたことがあり、このトピックは日本では未だ法整備が進んでいない部分ではありました。他方、アメリカにおいては、Fiduciary Duties of Controlling Shareholdersという形で、これまでに既にいくつものCaseが積み重なり、一定の法解釈が存在します。このように、アメリカにおける法実務を学び、今後の日本における業務のヒントにすることで、更に自身のリーガルサービスに深みを持たせることができると考えました。特にペンシルベニア大学ロースクールは、会社法分野において非常に有名なロースクールであり、アメリカの著名な教授が多く在籍することから、ペンシルベニア大学ロースクールへの留学を希望するようになりました。
さらに、ペンシルベニア大学には、世界で最も有名なビジネススクールであるウォートンスクールがあることから、ペンシルベニア大学ロースクールの学生は、ウォートンスクールの授業を履修することや、Wharton Business and Law Certificateというウォートンスクールがロースクールの生徒向けに提供するプログラムを受けることもできます。事務所の業務においては、法的観点で事案を紐解くことももちろん重要ではあるものの、ビジネスの観点で経営陣がその瞬間に何を考えているのかを察することも重要であり、そのようなビジネススキルを学ぶためにも、ペンシルベニア大学ロースクールへの留学を希望しました。

ペンシルベニア大学ロースクールでの学業

アメリカの法曹を目指す学生は、大学卒業後にロースクールにおいて3年間のJD(Juris Doctor)のプログラムに入るのが一般的であるのに対して、他国での法学部又は法科大学院の学位取得者や法曹の有資格者などは、約1年間のLLM(Master of Laws)のプログラムに入ることになります。ペンシルベニア大学ロースクールのClass of 2025は、34か国から136人の学生がLLM生として入学しました。その中には、自国で弁護士、裁判官、検察官、学者、インハウスローヤー、政府職員等の様々なキャリアを経た人々がいます。
ペンシルベニア大学ロースクールでは、はじめにFoundations of US Legal Systems、US Legal Writing及びUS Legal ResearchというLLM生の必修科目を受講するSummer Term(8月)を経て、自身の興味・関心に合わせて選択した授業を履修するFall Term(9月〜12月)とSpring Term(1月〜4月)を過ごすことになります。
私は、Fall Term にCorporations、Shareholder Activism等、事務所で携わってきた業務と親和性のある授業を履修しながら、International Arbitration、Cross-Border M&A等、新しい分野の知識も学ぶことができました。そしてSpring Termには、Drug Product Liability Litigation等の訴訟分野を学びながらも、Negotiations等のビジネス寄りの授業も履修しています。9月以降の授業は、基本的に全ての授業がアメリカのJD生との共同授業であり、かつソクラテスメソッドを通じて教授との質疑応答を繰り返すことにより授業が進行するため、アメリカの学生や教授とのディスカッション等を通じて高いレベルでの英語に触れることができます。また、アメリカの判例・文献のリサーチやリーガル・メモの作成、プレゼンテーション等の課題にも継続的に取り組む必要があるため、これらの勉学を通じてアメリカの先端的な法律実務を深く学ぶことができます。
さらに、私は、並行してWharton Business and Law Certificate のプログラムを受講しているため、ウォートンスクールの教授の授業を通じて、Global Strategic Management、Corporate Finance、Negotiations、M&A等のビジネススキルを学ぶこともでき、非常に有意義な学生生活を送ることができています。

フィラデルフィアでの生活

フィラデルフィアは、アメリカで6番目の人口を有する都市ですが、その中心であるCenter Cityとペンシルベニア大学があるUniversity Cityに生活に必要となる全てのものが揃っており、これらの2つの都市の中は歩いて回ることができるほどコンパクトにまとまっていることから、妻と小さな娘と留学に来た私にとっては、非常に住みやすい場所です。巷では、フィラデルフィアは治安が良くない都市としても有名ですが、実際に住んでみると、治安が良くない場所は少し離れた特定の地域のみであり、Center CityやUniversity Cityで生活する分には怖い思いをすることなく過ごすことができています。それどころか、フィラデルフィアに限ったことではないかもしれませんが、アメリカにいる人々は子供に驚くほど優しく、道端やバス、カフェなどで出会った人が気さくに話しかけてくれたり、ベビーカーを押す私たちのためにドアを当たり前のように開けてくれたり、何か困ったことがあっても近くの人が助けてくれる等、楽しく安心した家族生活を送ることができています。
また、フィラデルフィアは、ニューヨークとワシントンDCに挟まれている都市であり、いずれの都市も1時間半〜2時間ほどで遊びに行くことができるため、週末にショッピングや小旅行に出かけることもよくあります。加えてフィラデルフィアの中にも、動物園、水族館、アミューズメントパーク、ショッピングモールが点在していることから、家族でこれらの場所に遊びに行くこともしばしばあります。
そして、フィラデルフィアは、アメリカの四大スポーツである野球、アメリカンフットボール、バスケットボール、アイスホッケーの強豪チームを擁する都市であることから、街全体がスポーツに非常に熱狂的でもあります。街を歩けばPhiladelphia Phillies(MLB)やPhiladelphia Eagles(NFL)のウェアやキャップを被った人を見ない日はないですし、特に今年はEaglesがSuper Bowlで優勝したこともあり、当時は街全体が応援の熱気で包まれるほどでした(優勝パレードの日は、公共交通機関がストップし、大学も全て休校、会社も休みになるほどの一大イベントになりました。)。
加えて、ペンシルベニア大学ロースクールも学生に最大限フィラデルフィアでの生活を楽しんでもらいたいという思いから、頻繁に大学主催のイベント(LLM生パーティ、ファミリーパーティ、各国の文化や伝統を伝えるパーティ、野球観戦、ハロウィンでのお化け屋敷、舞踏会、大学院生とウォートン生とのボクシング観戦、著名アーティストを招いたライブイベント等々)も企画され、年齢・国籍を問わず積極的に交流する機会が多数あります。また、学生たちもイベントが好きな人々が多く、最低でも月に1回はピクニックやホームパーティ等のイベントが開催されています。さらに、ほとんどのイベントでは家族を招待することができるため、今では、私の家族もLLM生の一部のような存在になっており、家族全員で留学生活を楽しむことができていることから、非常にありがたく感じています。

今後について

あっという間に時が過ぎて、卒業まであと2か月を切ってしまいましたが、残りの期間も実のある留学生活となるよう、積極的に活動していこうと思います。卒業後は、アメリカのトップローファームにおいて、実際に最先端の法実務を間近で経験したいという思いから、ニューヨークの法律事務所で約1年間の研修を行う予定です。帰国後は、留学・研修で得た経験を活かして、より一層充実したリーガルサービスを提供していきたいと考えています。

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