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留学ボイス
岩佐 勇希 弁護士(2018年登録)

私は2019年1月にMori Hamadaに入所し、M&A、コーポレート・ガバナンスの業務を中心に取り扱ってきました。5年半ほど執務した後、2024年8月からはハーバード大学のロースクール(LL.M.)に留学しています。
この原稿は、最終学期である春学期(2~5月)の終盤に差し掛かり、LLM生活の終わりが見え始めた時期に書いています。

ハーバード大学への留学

留学前のコーポレート業務では、米国法律事務所と協働することや欧米クライアントの業務を行うことも多くありました。その際、米国法を前提とした議論が行われることも多かったため、留学やその後の研修等を通じて、業務で断片的に獲得した知識を体系的なものとするとともに、米国における実務や議論の状況を知ることを目的として留学を希望しました。また、留学後の研修において、米国法律事務所の弁護士の働き方や米国法律事務所を日常的に依頼していると思われるクライアントが弁護士に対して何を期待し、それに米国の弁護士がどのように応えているのかを実際に体感したいと思ったことも、留学を希望する理由の一つとなりました。

ロースクールでの学生生活

LLMプログラムのカリキュラム

ハーバード大学のロースクールのLLMプログラムの参加者は約200人で、60か国以上から様々なバックグラウンドを持った学生が集まっています。弁護士や裁判官などの法曹資格保有者ももちろん多いものの、母国で博士課程に在籍中の学生がいるなど、研究や教育の分野でのキャリアを歩んでいる学生も比較的多い印象を受けました。
ハーバード大学のLLMプログラムでは、コモンローの国出身であるか、アメリカで司法試験を受験予定であるかに応じて履修が必要な科目が変わってきますが、それに加えて論文の提出が卒業要件となっていることが特徴的です。論文の作成は、ロースクールの教授に論文指導を依頼し、自ら論文のテーマを設定した上で指導担当の教授とやり取りをしながら進めていくこととなり、学生時代に卒業論文を作成したことがない私にとっては新鮮な経験でした。
必修以外の科目では、Corporate and Capital Markets Law and Policyという授業を履修しました。この授業では、毎週企業法や資本市場に関する様々なトピックが設定され、当該トピックに関連する複数の論文やコラム等を読み・ペーパーを事前に提出した上で、当該分野の専門家(デラウェア州の裁判所の裁判官、SEC委員、アクティビストファンドの創業者CEO、原告・会社側それぞれの弁護士、欧州のSWFの法務責任者等)がゲストスピーカーとして授業に参加しディスカッションをする形式がとられています。予習負担の大きい授業ではありましたが、様々な分野における最新の論点について学んだ上で、各分野のトップランナーから率直な意見や考え方を聞くことができ、非常に有益な授業でした。
また、ハーバード大学のロースクールにはCross-Registrationという制度があり、公共政策大学院であるKennedy SchoolやビジネススクールであるBusiness Schoolの授業を履修することができ、それらのスクールとの合同授業も多く開講しています。

学生生活・イベント

授業形態には様々なものがありますが、多くの授業で教授と学生の対話に一定の時間を割く、いわゆるソクラテス・メソッドが採用されています。LLM自体は主に米国外で法律の学位を取得した学生のためのプログラムであるものの、ごく一部の授業を除けば、全ての授業をJDプログラムに参加している通常の米国の学生と一緒に授業を受けることになります。LLMの学生数も多いため、教授やJD生もLLM生であるか否かを特に意識することなく、学生の一部として分け隔てなく接している印象を受けました。
授業外では、ロースクール主催・学生主催のプログラムやイベントが日々参加しきれないほど実施されています。LLM生向けのものとしては、例えば、最初の学期である秋学期の開始前に比較的長いオリエンテーションがあり、連日学生間の親交を深めるための軽食付きのイベントやディナー会が実施され、多くのLLM生と交流することができました。また、運動会(JD1年生とLLM生の学生主催の運動会)、Thanksgiving関連のイベント(アメリカのThanksgivingのディナー体験会)、International Party(LLM生が国・地域ごとに食事や文化等を紹介する会)、100周年記念イベント等もあり、International Partyでは寿司を提供したところ、どのテーブルよりも早く10分程度で完売し、日本食・寿司人気を改めて実感しました。JD生とは日々授業で接する機会がありますが、それ以外にもLLM生・JD生のマッチング制度やBar Reviewという毎週ロースクール生が開催している懇親会があり、様々な場面で交流があります。

ケンブリッジでの生活

ロースクールがあるケンブリッジは、その中心部を流れるチャールズ川の両側にキャンパスや学生寮が所在しており公園や緑地も多い地域のため、穏やかで緑豊かな過ごしやすい街です。現在住んでいるアパートの周辺の緑地では、膝まである大きさの鳥が群れで芝生をついばんでいたり、ターキー、リスやうさぎがその辺りを歩いていたりし、東京とは違うのどかな環境を楽しんでいます。周辺地域全体に学生が利用可能な図書館、ジム、プール、食堂やカフェも数多くあり、学生が勉強やリフレッシュに気軽に利用できる設備・環境が整っています。
また、大学施設周辺に飲食店やスーパーが比較的多くあるだけでなく、公共交通機関も便利で空港も近いボストンの中心部に短時間でアクセスすることができるため、車がなくとも日帰りでの外出もしやすく、学生生活を送りやすいエリアだと感じています。もっとも、ケンブリッジは日本の札幌と同じくらいの緯度に位置しており今年は積雪も多かったため、冬の時期は非常に冷え込みました。チャールズ川は冬の期間は全面凍結していましたが、最近ようやく川の表面の氷が解け終わり少しずつ緑が戻ってきており、徐々に春が近付いてきているのを感じています。

おわりに

LLMプログラムの終わりが近付き、去年の8月からの生活を振り返ってみると、留学生活は想像していたよりも短く慌ただしい時間であったと感じます。LLMプログラム修了後は、ニューヨークの法律事務所で留学前も取り扱っていたコーポレート業務を中心に1年間研修をする予定です。ケンブリッジの穏やかな環境での生活が終わってしまうことへの寂しさもありますが、研修で学びたいと考えていることも多くあり、新たな機会を楽しみにしています。研修、帰国後の業務と各ステップに心残りなく進めるよう、残りの留学生活も充実させていきたいと考えています。

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